【アンプの必要性】ヘッドホンアンプやスピーカーアンプの効果
スマホにイヤホンを直接接続しても音が聴こえるのに、どうしてアンプが必要なのでしょうか?
オーディオアンプの役割と音質への影響について考えてみたいと思います。
アンプの役割
アンプには次のような役割があります。
- 大きな音を出す
- インピーダンスの高いヘッドホンを鳴らす
- 音を歪ませない
大きな音を出すには大きな電力が必要
イヤホンやヘッドホンは耳に直接付けるので小さな音でも十分聴こえるのですが、スピーカーから十分聴こえるレベルの音量を得ようとするなら、出力する電力は数百mWは最低でも必要です。
それに対し、イヤホンジャックから出力できる電力は数十mW程度。
直接スピーカーを鳴らすには電力不足なのです。
では、アンプはどうやって出力電力を大きくしているのでしょうか?
電圧増幅
オーディオプレイヤーやスマホの音声出力はラインレベルと呼ばれ、最大振幅は1V程度です。
出力電圧をV、スピーカーやヘッドホンのインピーダンスをZとすると、出力電力は
\[
P = \frac{V^2}{Z}
\]
で決まります。
ヘッドホンやスピーカーのインピーダンスは4Ω〜16Ωくらいのものが多いのですが、中には600Ωなどの高いインピーダンスのものもあります。
高いインピーダンスのヘッドホンの場合、スマホを直接繋いでも電圧が低いため十分な電流を流すことができず、音が小さくなってしまいます。
なので、アンプで電圧を増幅してアンプ・スピーカーレベルにして出力する必要があるのです。
電流能力をアップして歪を防ぐ
スマホのイヤホンジャックから出力できる電流は精々50mA程度です。
例えば、4Ωのヘッドホンやスピーカーに繋いで、±0.1Vの出力電圧であれば、電流は±25mAなので問題ありません。
しかし、ボーリュームを上げて±0.4V出力電圧を出そうとすると、必要な電流は±100mAになるので電流不足となります。
最大電流が50mAなら、4Ωのヘッドホンでは最大電圧は
\[
V_{ max } = 50 \times 4 = 200_{ mV }
\]
となり、±0.2Vまでしか出力できません。
なので、インピーダンスの低いヘッドホンやスピーカーに繋いで音量を上げていくと、このように波形が歪みます。
アンプは出力電流を大きくする(出力インピーダンスを下げる)ことで音が歪まないようにしているのです。
また、電流を大きくすることで、大音量を出せるようにもなります。
電流をI、Zをスピーカーのインピーダンスとすると、電力の計算式は、
\[
P = I^2 \times Z
\]
なので、電流が大きいほど出力電力が大きくなるためです。
安いアンプと高いアンプの違い
安価なアンプと高級なアンプで音質が異なるのは、アンプの構造に大きな違いがあるためです。
1.周波数帯域の違い
安価で小型のアンプでは低周波がカットされ、低音が出ない傾向があります。
アンプの内部には直流をカットするコンデンサがあるのですが、このコンデンサの容量が大きいほどより低周波まで再生することができるようになります。
コンデンサの容量を大きくすると、コンデンサのサイズが大きくなり、価格も高くなります。
そのため、安価なアンプでは低音が出ない場合が多いのです。
2.出力形式の違い
アンプの出力形式として、A級やAB級などと書かれている場合があります。
多くのアンプでは発熱が少ないAB級出力を採用しているのですが、高級アンプではA級や純A級といった発熱が大きい形式が採用されています。
A級アンプは、音声信号がゼロの状態でも大きなバイアス電流を流していて、それにより損失が発生して発熱が大きくなります。
反面、バイアス電流によってトランジスタの動作が歪む部分を使わないようにできるため、歪の少ない音にすることができます。