A級・B級・AB級アンプの原理と音質の違い
オーディオアンプには、A級やAB級などと書かれているのをよく見るかと思います。
今回はこの○級アンプというものの回路構成と原理、音質の違いなどについて説明していきます。
アンプの出力段
オーディオアンプの構成は、電圧増幅段と電流増幅段に分かれています。
電流増幅段が最終出力になるので、出力段とも呼ばれるのですが、出力段の回路形式によってA級やAB級などと名付けられています。
出力形式の種類
オーディオアンプの出力形式とそれぞれの違いをまとめてみました。
出力形式 | 純A級アンプ | A級アンプ | AB級アンプ | B級アンプ |
---|---|---|---|---|
音質(歪み率) | ◎ | ○ | △ | ☓ |
消費電力 | ☓ | ☓ | △ | ○ |
この他にもD級アンプ(デジタルアンプ)などもあるのですが、方式が全く異なるので、ここでは言及しません。
それでは、それぞれの形式について詳しく解説していきます!
B級アンプ
まずは基本のB級アンプ。
NPNトランジスタとPNPトランジスタのプッシュプル回路で構成されます。
プッシュプル回路というのは、上側(NPN)が電流を流し出し(プッシュする)、下側(PNP)が電流を引き込む(プルする)ことから名付けられています。
最も簡単な出力段ですが、入力が0Vの時に両方のトランジスタがオフするので出力信号が歪みます。
これをクロスオーバー歪みと言います。
入力がゼロの時の電流(アイドル電流)がゼロなので消費電力は小さくなるけど、音質が悪くなるのがデメリットです。
AB級アンプ
B級アンプのデメリットを少し改善したのがAB級アンプです。
2つのトランジスタのベースに入力される電圧にバイアスをかけることで、どちらかのトランジスタが必ずオンしている状態にします。
入力が0Vでも両方のトランジスタがオンしているのでクロスオーバー歪みが発生しません。
入力振幅が大きい領域では片方のトランジスタしかオンしないので、消費電力を抑えることができます。
A級アンプ
どちらのトランジスタも電流がゼロにならない(カットオフしない)のがA級アンプです。
バイアス電圧は次の式で決まります。
\[
V_{bias} = V_{BE} + ( \frac{V_{BE}}{R_{5}} + I_{B} ) \times R_{4}
\]
R4を可変抵抗にしてバイアス電圧を調整することが多いです。
カットオフしないので、特性はこのようになります。
常に大きな電流が流れているので、トランジスタのVBE-IC特性が直線に近い部分だけで動作するため、歪みが小さくなります。
特にバイアスが大きく、ほぼ直線の部分だけで使うアンプは純A級アンプと呼ばれます。
AB級、A級、純A級の明確な基準があるわけではなく、曖昧なものです。
A級アンプは音が良くなるけど発熱が大きくなるため、大型の部品を使ったりヒートシンクが必要になったりするので、コスト、サイズ、重量の面がデメリットとなります。
実際にA級アンプを作ってみたので、こちらの記事もチェックしてみてください。